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最後の冬

4月9日、あと1回分だけ残っていた春の18きっぷの期限日が明日に迫っていた。

18きっぷは、JRの鈍行列車が1日乗り放題×5回分という便利なきっぷだが、1回分だけ、つまり日帰りでとなると、行ける範囲はそんなに広くはない。

とはいえ無駄にしてしまうのはもったいないので、そんなに考えずに北関東を回ってくることに決めた。海を横目に房総を一周したかったけど10日の天気予報は雨だし、静岡や山梨は何度か電車で行ったことあるし、ほぼ消去法だ。

地図を適当にみて、とりあえずの目的地を群馬県嬬恋村に決定。理由は山間部にあってなんとなく楽しそうだったからと、嬬恋=吉田拓郎のイメージがあったから。(あとで分かったのだけど、吉田拓郎つま恋コンサートと嬬恋村は全然関係ないらしい)

 


どうしてこんなに悲しいんだろう

(吉田拓郎で一番好きな曲。正社員だった頃、よくこれを聴いて泣きそうになりながら家に帰っていたというキモい過去がある。)

 

翌日、4月10日の朝。起きたらめちゃくちゃに寒かった。

東京は最高気温6℃、最低気温4℃。予報通り雨も降っていて、遠出するような天気ではない。さらにコンビニで朝ごはんを買っていたら傘をパクられ、あたふたしていたら始発を逃し、もう色々と最悪だ。

しかしここは無職の見せどころ。僕が行かないで誰が行く?毎日家でゴロゴロしやがって!みんな働いてるんやぞ!恥ずかしくないんか!!

そんなぐあいにほとんど意地で出発。

 

鉄道の旅はそこそこ経験しているので、高崎あたりまでは新鮮味にかけていたが、高崎から先の吾妻線は初めて。知らない場所はどんなところであれやっぱりワクワクする。

列車はどんどん山のほうに向かって進んでいき、約1時間半の乗車を経て、嬬恋村の玄関口である万座・鹿沢口駅に到着。

 

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万座・鹿沢口のホームから

4月も半ばに近いこの時期に、群馬でこんな車窓が見れるとは・・・。

嬬恋村のこの日の最高気温は4℃。別の世界に来たみたいにがっつり冬だった。

列車から降りて、駅周辺を散策する。

 

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僕は四季の中で冬が一番好きだ。

寒い寒いと言いながらも散歩したり、そのあと室内で温かい飲み物を飲むのも好き。とにかくホットコーヒーがおいしい。毛布や布団にくるまって部屋でボーっとするのも好き。引きこもりがちな季節だから、ゲームや読書にも安心して没頭できる。植物が枯れて灰色みがかった地方の寂しい景色が好き。でも電飾できらきらしている都会の景色もきれいで好き。クリスマスの時期何もしなくても、みんな楽しそうだから自分もどこか楽しい気持ちになるし、クリスマスが終わって一転して大晦日、正月へと一気に終末に向かっていくような感じも好き。

 

嬬恋村はキャベツの名産地らしいけど、これではキャベツどころではない。

1時間くらい特に何もない道をうろうろして、駅前に戻って地元の食堂に入ったら、優しいおばちゃんが出迎えてくれた。石油ストーブのにおいの中で食べた、あつあつのもつ煮込み定食がとても身に沁みた。

おばちゃんと少し話したけど、この周辺でも4月になってこんな風に雪が降るなんてことは滅多にないらしい。まぁさすがにそうかぁ。

ふたたび吾妻線に乗ると、高崎に近づくにつれて次第に雪は弱まり、栃木や茨城のあたりを通った頃にはもう雨もあがっていて、嬬恋村での景色が嘘みたいだった。

 

そんな感じで平成最後の冬が終わった。期限ギリギリの中で決めた地味な乗車だったけど、これはこれでレアな体験で楽しい一日だった。水曜日とかいうド平日にこんなことができる立場でよかったなあ。

 

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栃木県の小山駅周辺で見た、ときメモ風の看板が気になるお店。あとで調べたら違法雇用で営業停止になった風俗店だった。